ビールの種類

 今では大資本によるビール生産もなされ、全国的な銘柄も存在するが、ドイツのビールは中世以来各都市で独自に生産されたため、これも地方色が強く、ほとんどの町で独自の地ビールが生産されている。

 まず最も多い下面発酵ビールは、色の違いから淡色(hell)と中間色(mittelfarbig)と黒色(dunkel)に分けられる。

 淡色ビールはピルスナー(PilsnerまたはPilsener、略してPils)とドルトムンダー(Dortmunder)に区別され、前者は淡い黄金色でホップの利いたさわやかな味がする。後者はそれほどホップが利いておらず、色がやや濃くてアルコール分も多い。なお、ピルスナーという名の元になるピルゼンはベーメンの町プルツェーニュ(Plzen)のドイツ名で、ここではすでに13世紀からビールが造られていたが、19世紀に下面発酵ビールがドイツから伝わり、以来、ピルスはラガー・ビールの代名詞になった。

 中間色ビールの代表はウィーンのビールである。色は明るい褐色で透明、味は甘い。ミュンヘン・ビールも本来これに属する。元来ここのビールは麦芽を焙煎した黒ビールであり、褐色を帯び、味は甘くてコクがあり、麦芽の味がし、ホップはそれほど利いていない。但し今日では趣向の変化でほとんど作られておらず、淡色のものに変わっている。ドルトムンダーに近いビールにエクスポルト(Export)があるが、これも元来は黒ビールで、仕込みに時間をかけた日持ちのするビールであった。さらに特殊なラガー・ビールにボックビーア(Bockbier)がある。Bockは山羊の意だが、山羊とは関係なく、諸説あるうちでバイエルンのEinbeck(バイエルン方言でOambock)という町の名から来ているというのが有力。麦芽とホップを通常のラガーよりも多く使い、特に麦芽が多い上、長時間寝かせて発酵させた後に十分熟成させるため甘い。

 一方、上面発酵のビールには麦芽(小麦とは限らない)を発酵させた淡色で低アルコール度のベルリーナー・ヴァイセ(Berliner Weiße 穀物酒のKornやラズベリージュースを加えて特大のカップで飲むベルリンの名物=写真左)や、デュッセルドルフおよびミュンスター特産のエールに似て苦みの強いアルト(Alt)、あるいはケルン、ボン近辺で飲まれている炭酸ガスが少なく淡い黄金色のケルシュ(Kölsch)、さらに黒ビールとしてはブラウンシュヴァイガー・ムンメ(Braunschweiger Mumme)などがある。後者は低温で発酵させ、ホップは使わない。

なお、ドイツ・ビールのアルコール度は1%位の薄いものから4%を越えるものまで多様で、種類や銘柄によって異なる。温度も、ラガーに関して言えば8-10度が最適とされている。専門の飲み屋(Bierstube)でゆっくり時間をかけて細かい泡を盛り上げてもらったビールが最もうまい。ドイツには陶器製の蓋付きのジョッキがあるが、これには飲み屋で買い求めて家でゆっくり飲むため泡が消えないように蓋がついているという説や、屋外で飲む際に木の葉などが入らないため等の諸説がある。


27.01.2006 更新