ドイツは何と言ってもソーセージの国であり、ハムにもいくつか独特のものがあるが、種類も消費量も圧倒的に少ない。特にスライスしたソーセージは夕食の主なおかずであるが、グリルしたり、ゆでたり、あるいはその他にも様々な料理法が存在する。
種類は1500を下らないと言われており、呼び名も地方によって、あるいはどういう時に何と一緒に食されるかで様々に異なっているが、ごく一般的には歴史のページの表に登場した呼称で分けることができる。
@)Brühwurst
原料は牛、子牛、豚肉で、腸詰めにし、成形した後80度の湯で茹でる(brühen)ためこの名が付いている。茹でる前に燻煙するものもある。種類が多いが、代表的なものに次のものがある。
ボックヴルスト(Bockwurst)[写真右]
フランクフルターより粗めに挽いた豚肉を使い、北の地方ではニンニクを入れるなど(Knoblauchwurst)、地方によって様々なものがある。食べ方はフランクフルターと同じ。
ウィンナー(Wiener)
日本でウィンナー・ソーセージとして有名。細かく切った豚の赤身肉を羊の腸に詰め、燻煙してから茹でたもの。1805年にフランクフルトのソーセージ職人がウィーンでフランクフルターを紹介したことがきっかけで作られた。
ミュンヒナー・ヴァイスヴルスト(Münchner Weißwurst)[写真右]
主に子牛肉を使った白いソーセージで、香草を混ぜる。時間が経つと味が落ちるため、作りたてを直前に茹でて食べるのが習慣で、「ヴァイスヴルストは12時の音を聞いてはならない」という格言がある。皮は食べず、またマスタードも辛みのないヴァイスヴルスト用が売られている。もちろんビールがよく合う。
ビーアヴルスト(Bierwurst)
原料は細かく切った牛肉に脂肪を混ぜ、粒芥子、ガーリックを加える。サラミに似ているが、サラミより柔らかい。文字通りビールに合う。
レバーケース(Leberkäß)
マイン川より南の地方の特産で、牛肉80%と豚肉20%をペースト状にすりつぶし、型に入れて焼く。したがって厳密にはBruehwurstではないが、一般的にはこれに属するものとされている。焼くだけにした型入りの材料が売られているが、日持ちが悪いのですぐ焼く必要がある。製品自体もあまり日持ちしない。夕食に薄切りにして食べるが、厚切りにしてステーキにしてもよい。なお、Käß は Käse(チーズ)の南部方言。Fleischkäse(肉のチーズ)とも言う。
A)Rohwurst
Dauerwurstとも言われる保存用のドライ・ソーセージ。筋を取り除いた豚肉に脂肪少々と牛肉を混ぜ、腸詰めにした後で冷燻して乾燥させる。キプロス島の古都サラミスが発祥地と言われるサラミソーセージが代表。生ハム(Katenschinken)やベーコン(Speck)もこの種類に属する。
ラントイェーガー(Landjäger)
豚肉で作る徹底的に乾燥させ、平らにつぶしたソーセージで、最近では使われないが、昔は農夫や猟師、あるいはハイカーが持ち歩いた。
B)Kochwurst
腸詰めにしたものを茹でるか、あるいはそれを冷やしてから冷燻する。
ブルートヴルスト(Blutwurst)
主として豚の血液(時には牛または子牛の血液)の中に、豚肉や背脂を混ぜて作るが、血液のみで作るものもある。ケーシングには、腸以外に胃袋を使う場合もある。
ツンゲンヴルスト(Zungenwurst)
ブルートヴルストの一種だが、肉の代わりに舌(Zunge)を使ったもので、切り口に血の黒と舌のピンク、脂肪の白が見える美しいソーセージ。
D)Aspik/Sülze
Kochwurstの一種だが、豚肉、脂身、凝固剤としての皮や頭、足などを煮込み、腸や豚の胃、膀胱などに詰めて再び加熱する。冷えると内部がゼリー状になる。