THE BEATLES AT THE HOLLYWOOD BOWLザ・ビートルズ・アット・ザ・ハリウッド・ボウル(1977年5月発表作品)![]() ![]() 1977年5月にリリースされたビートルズ初の公式ライヴ・アルバム。 アメリカ、ロサンゼルスの野外劇場ハリウッド・ボウルで、1964年8月23日と翌65年8月30日に行われたコンサートからベスト・トラックを集めて収録した編集モノですが、オーヴァー・ダビング等、演奏そのものに対する加工は一切行っていないと、ライナーノーツでジョージ・マーティンが断言しています。 1977年1月、キャピトル・レコード社長のパスカル・メノンから13年前(当時)のビートルズのライヴ・テープを聴いて欲しいと依頼された時、さしものマーティンも不安だったと言います。 マーティンはエンジニアのジェフ・エメリックと共に、3トラックで録音されたテープをマルチ・トラックに移し替え、リミックス・イコライジングを施し、テープをクリーニングして2回のコンサートの曲を慎重に編集してこのレコードを作りました。 時は1977年。「銀座ナウ!」の木曜日「ポップ・ティーン・ポップス」では、キッス、クイーン、ベイ ・シティ・ローラーズ、ディスコ・サウンドが鳴り響いていた時代。 20世紀最大のフェノメノン、ザ・ビートルズ初のライヴ・アルバムは世に出たのす。今回は久しぶりにこのアルバムをじっくりと聴いてみました。 曲目解説(カッコ内は音源となった年度) A-1 TWIST AND SHOUT ('65) バート・ラッセル/フィル・メドレー作。 1962年のアイズレー・ブラザースのヒット曲がオリジナル。 英国オリジナル・デビュー・アルバム"PLEASE PLEASE ME"のラストを飾るナンバー。"And Now, Here they are! THE BEATLES!"というMCとともに轟音のような大歓声が沸き上がるところからこのレコードはスタートします。 初期ビートルズの定番である、中間のブリッジ部分から始まる"TWIST AND SHOUT"が、コンサートそのもののオープニングであり本アルバムの1曲目。アルバム全体を聴き終えると分かりますが、'64年のステージからの曲はオリジナル・レコーディングに比べてアップ・テンポで演奏されており、'65年のステージからの曲は逆にややテンポを落とし気味でゆったりとしたスイング感を楽しめます。この"TWIST AND SHOUT"も'65年音源です。エンディングのポールの"Yeah!"で観客は大興奮。 それにしてもこの大歓声。ジャニーズのステージでもこんなにすごくない。 A-2 SHE'S A WOMAN ('65) ポールの作品。 英国8枚目のシングル"I FEEL FINE"のB面に収められたナンバー。2拍4拍のリズムギターのカッティングが非常に印象的。スタジオ録音盤と違い、イントロの裏リズムにハイハットがちゃんと乗っているのでイントロからノっていけます。ポールのヴォーカルも非常にパワフルで、シャウトしたときの声の歪み具合などはオリジナルのスタジオ・ヴァージョンよりカッコイイ。ジョージのリード・ギターも、スタジオ録音を忠実に再現していてキレイな音色です。エンディングのリフレインのバックで鳴るリンゴのトップシンバルのカップ打ちがスリリング。 A-3 DIZZY MISS LIZZY ('65) 1965年発表の英国5枚目のアルバム"HELP!"から、アメリカのR&Bシンガーラリー・ウィリアムスの作品。 ジョンの曲紹介が大歓声によってかき消されてしまいます。リード・ヴォーカルもさることながら、ジョンのリズム・ギターがバカでかい音でフィーチャーされている。歌いながら単なるコード打ちではなくちゃんと単弦弾きのリフを弾いており、後の"REVOLUTION"、"YER BLUES"で開花する「リズムギタリスト・ジョン」の魅力が満喫できます。リンゴのドラムも非常にパワフルで、テクニックはともかく演奏の疾走感は現代のそこいらのHRバンドを上回っています。 A-4 TICKET TO RIDE ('65) ジョンの作品。英国9枚目のシングル曲。 映画"HELP!"(邦題「4人はアイドル」)にも効果的に使われ、英国5枚目にあたる同名サウンドトラック・アルバムにも収録された曲。MCはポール。 "Can You Hear Me?" というポールの煽りでまた大歓声。アップ・テンポの曲が続いたので、ミドル・テンポの本作で少し雰囲気が変わります。ポールのハーモニーも高音域だがバッチリキマっている。 でも2コーラス+エンディングで終わらすのはちょっと短くないか?(^^;) A-5 CAN'T BUY ME ME LOVE ('65) ポールの作品。 1964年発表の英国3枚目のアルバム"A HARD DAY'S NIGHT"に収録され、同名映画でも使用された初期の名曲。英国本国では6枚目のオリジナル・シングルとして発表された。 この曲は初期ポールの代名詞とも言える曲で、ポール自身がノリにノッている様子がよく分かります。ジョージのリード・ギターもレコードの音色をよく再現しています。会場人気No.1はやはりポールですかね。 A-6 THINGS WE SAID TODAY ('64) ポールの作品。 1964年発表の英国3枚目のアルバム"A HARD DAY'S NIGHT"のB面にカップリングされ、英国7枚目のオリジナル・シングル"A HARD DAY'S NIGHT"のB面にも収録されました。曲前のMCはジョージ。 この曲は'64年の音源からピック・アップされたもの。したがって、ジョージが「新しいLPから・・・。」と紹介している。オリジナルはアコースティック・ギターとピアノによるバッキングでしたが、このライヴでは全編エレキ・ギターによって演奏されている。前曲までと打って変わって少し急ぎ気味のテンポでややせわしない印象を受けます。サビの部分でリンゴのハイ・ハットが突然ラウドになり、ここで観客が熱狂します。 A-7 ROLL OVER BEETHOVEN ('64) チャック・ベリー1956年の大ヒット曲。 英国2枚目のアルバム"WITH THE BEATLES"のB面トップを飾る大人気ナンバー。リード・ヴォーカルはジョージ。 オリジナル・レコーディングではスピーディな正調8ビートで演奏されていたが、このライヴではシャッフル・ブギー気味のリズムにアレンジされている。最終コーラスでは、ヴォーカルのバックをベースのみで支えるオールド・スタイルのアレンジを加えている。ジョージの声も予想外によく出ていて大健闘。リード・ギターもスタジオ盤よりだいぶこなれている。ラストのポールのコーラスも非常によくキマッていてカッコイイ。 B-1 BOYS ('64) "Sing a song called "BOYS" Ringo!!" というポールのMCとともにハードなイントロでスタート。それまでステージの一番奥で黙々とドラムをプレイしていたリンゴにスポットが当たります。 ルーサー・ディクスン/ウェス・ファレルの作品。オリジナルは、ビートルズのメンバーたちのお気に入りであったアメリカの黒人女性コーラス・グループザ・シレルズが、"WILL YOU LOVE ME TOMORROW"のB面曲として発表した作品。英国デビュー・アルバム"PLEASE PLEASE ME"に収録された。 ヴォーカルはリンゴ。スタジオ録音ではいささか頼りなさげだったリンゴの歌も、このステージではワイルドに変貌。 ドラムのフィル・インがやや端折り気味なのはご愛嬌。それを差し引いてもこのビートを叩き出しながらこれだけの声量で歌えるのはスゴイ。 B-2 A HARD DAY'S NIGHT ('65) ジョンとポールの共作。 1964年7月に発表された英国7枚目のシングル曲にして同名映画のタイトル曲。ジョンがユーモアたっぷりに紹介すると観客の興奮も最高潮に達します。「ジャーン」という印象的なイントロも見事に再現。 B-3 HELP! ('65) ジョンの作品。 1965年に10枚目のシングル曲として発表されたビートルズ2作目の主演映画のタイトル曲。イントロ前のMCでジョンが「そのライトをどけてくれ!」と観客(スタッフ?)に言っています。ステージ終盤で疲れも出てきたのかイラついているようです。(オリジナル・レコーディングでは、'65年8月30日のステージのラスト前に演奏されている。) 映画のタイトル曲が2曲続いて観客席も大盛り上がり。ジョンの歌い方は男らしくてカッコイイが、3コーラス目ではさすがに息切れしたのか"I never needed anybody's・・・"の"anybody's"のところで「オエッ」と言っているのが聴こえます。 B-4 ALL MY LOVING ('64) ここからは'64年のステージからの録音が続きます。 ポールの作品。 英国2枚目のアルバム"WITH THE BEATLES"に収録。オリジナル・スタジオ録音はジョン・レノンのチャキチャキのリズム・ギターと、ジョージ・ハリスンのカントリー・フレイバー溢れるリード・ギターが印象的。ポールが演奏しながら観客の歓声に反応しているところがすごいですね。最後のコーラス部分は、高音の出ないジョージがメイン・メロディのパートを、ポールがハーモニーのパートを歌っています。 B-5 SHE LOVES YOU ('64) ジョンとポールの共作。 英国4枚目のオリジナル・シングル。この曲によって彼らはその地位を確固たるものにしたと言えましょう。「少し古い曲なんだけど」(リリースは前年の'63年)とジョンが紹介して始まります。 B-6 LONG TALL SALLY ('64) リチャード・ペニマンことリトル・リチャードの大ヒット曲。 ビートルズ・ヴァージョンは1964年のEP版で初めて紹介され、フル・アルバム収録は1980年に発表された"RARITIES"が初。オリジナル・レコーディングでは、リンゴのスネアとリズム・ギターが2拍3連のシャッフル・ビート、トップ・シンバルとピアノが正調8ビートと言う複雑なリズム構成でしたが、さすがにステージでそれは再現できなかったのかシンプルなシャッフル・ビートで演奏されています。 これが最後の曲であることをポールが告げると大観衆はもう大狂乱。「キャー!!イヤー!!死ぬー!!!」てな感じだでしょうか。'60年代の大プロモーターシド・バーンスタインが残した言葉、「ところどころにビートルズの音楽が混じっている40分間の悲鳴の連続を聴くために、聴衆は30万ドル以上を支払ったのだ・・・。」もあながち大げさではないということがこのアルバムを聴くとよく分かります。大興奮のうちにいともアッサリとコンサートは終わりを告げました。 このアルバムのジョージ・マーティンのライナーノーツには、彼と娘ルーシーとのやり取りについて書かれています。 今年9歳になる私の末娘ルーシーに、最近こう質問された。 「おとうさん、昔ビートルズの録音をやっていたことがあるんでしょう。ね、教えて。 ビートルズって、いまのベイ・シティ・ローラーズと同じくらいグレイトだったの?」 意外な質問だったが、私はこう答えた。 「いや、ローラーズほどではなかったね。それほどじゃなかった。」 今はこれでいい。 そのうちルーシーにも分かるときが来るだろう。 ルーシーも今はもう38歳。 このアルバムを聴いてなにを感じているだろう。 <了> |
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