Capitol Records 1

キャピトル・レコードは作詞家&歌手のジョニー・マーサーが、友人のグレン・ウォリクス、バディ・デ・シルヴァと設立したアメリカ西海岸初のメジャー・レーベルです。屈指のジャズ・レーベルとしても有名なほか、50年代にはナット・キング・コールフランク・シナトラらのスーパースターを擁しアメリカン・ポップスの黄金時代を築きました。55年に英EMIの傘下に入り、64年、ビートルズ世界進出の狼煙となる"MEET THE BEATLES"のリリースからビートルズとの関係がスタートします。
ビートルズのキャピトル盤にはレーベルの種類、プレスされた場所によって様々な種類があります。
まず、そのレコードが生産された時期で区分けするのであれば、1960年代のビートルズ現役時代のほとんどの時期に生産されたレコードには7色のカラーバンドをあしらった通称「レインボウ・キャピトル・レーベル」が使用されています。
このレーベルはさらにそれぞれのレコードが生産された場所によっても違いがあり、キャピトルレコード社の各プレス工場(ペンシルヴェニア州スクラントン、カリフォルニア州L.A.、イリノイ州ジャクソンヴィル、ヴァージニア州ウィンチェスター等)ごとにレーベルの字体等に違いがある他、あまりのビートルズ人気に自社だけでは生産が追いつかず、ライバル企業であったはずのRCA VICTORDECCACOLUMBIAといった他のレコード会社にプレスを委託したものもあり、またそれぞれに異なる特徴があります。
まずはこの「レイボウ・キャピトル・レーベル」をご紹介しましょう。

Rainbow Capitol Label (U.S.)

MEET THE BEATLES (U.S. MONO T-2047)

MEET THE BEATLESの米盤は3枚所有していますが、これはその中でもっとも1stプレスに近いものです。
マトリクスはいずれも手彫りで、T1 2047-A (SIDE 1)、T2 2047-B (SIDE 2)

ビートルズのキャピトル・オリジナル盤には通常、レコードのトレイル・オフ・エリア(曲が終わったとの空白部分にあたる内側の余白)に、そのレコードがどの工場でプレスされたものであるかを示す刻印があります。(スクラントンなら三角形の中に"IAM"の3文字、L.A.ではのマーク、ジャクソンヴィルなら手書きかマシンスタンプによる"O"の文字、ウィンチェスターならアンテナのようなマーク)
しかしこのレコードにはその刻印はなく、その代わり手書きで日付と思しき数字が薄く彫られています。
レーベルの盤面表記が「1」ではなく「l」であることから東海岸プレスであることは確実で、写真でお分かりいただけるとおり、上部のキャピトル・レコードのログマークを横切る形で、大き目の同心円の段差があります。
また、バック・カヴァー右下の番号は3で、ジャケットも盤も東海岸で作られたものです。
著作権表示はSIDE-1はすべて"BMI"、SIDE-2はDON'T BOTHER METILL THERE WAS YOUの2曲が"ASCAP"で残りは"BMI"
レーベルは光沢のないマット・タイプです。

MEET THE BEATLES (U.S. MONO T-2047)

トレイル・オフ・エリアに星型の刻印が刻まれているL.A.プレス盤。

マトリクスはいずれも手彫りでT1-2047-G-14-1 (SIDE 1)、T2-2047-G8 (SIDE 2)
西海岸盤の特徴として、レーベル上のタイトル"Meet The BEATLES"は東海岸盤に比べて中央に詰まったレイアウトになっており、レーベルの盤面表記は横にヒゲのある「1」になっています。
レーベルは光沢のあるタイプです。

THE BEATLES SECOND ALBUM (U.S. MONO T-2080)

このアルバムのキャピトル盤は2枚所有しています。
いずれもRCAレコードに生産委託されたもので、RCAプレスの特徴である、"Deep Groove"と呼ばれる深い溝がレーベルに見られます。またトレイル・オフ・エリアにはマトリクスNo.のほかに手彫りのRの刻印があります。

マトリクスは1枚がT×1 2080 J1G (SIDE 1)、T×2 2080 GI4 (SIDE 2)、もう1枚はT×1 2080 H13 (SIDE 1) 、T×2 2080 GI4 (SIDE 2)でいずれも機械によるスタンプです。
レーベルは光沢のあるタイプが使われており、レーベルの基本デザインは東海岸スタイルですがタイトルと(Recorded In England)の間にメンバー4人のフル・ネームが挿入されるようになりました。

SOMETHING NEW (U.S. STEREO ST-2108)

SOMETHING NEWのステレオ盤です。
このレコードには、トレイル・オフ・エリアに手彫りによる「O」(オー)の刻印があります。
これはジャクソンヴィルでプレスされたことを示す記号で、同工場でプレスされたレコードにはスタンプ、もしくは手彫りいずれかの方法で「O」の記号が刻印されます。
マトリクスはST1-2108-W6 (SIDE 1)、ST2-2108-W6 (SIDE 2)でいずれも手彫りです。
レーベル・デザインは東海岸スタイルで、紙質はマット・タイプ。
スピンドル・ホール左側のぎりぎりの位置にSTEREO表記があります。

BEATLES '65(U.S. MONO T-2228)

スピンドル・ホール周囲の円が最も小さいDECCAレコード委託プレス盤で、レーベルデザインそのものは東海岸スタイル(盤面表記の「l」、文字間の広いタイトル)です。

マトリクスはいずれも手彫りでT1-2228-P1-P (SIDE 1)、T2-2228-T6-P (SIDE 2)
レーベルは光沢のないマット・タイプで、こちらもタイトルと(Recorded In England)の間にメンバー4人のフル・ネームが挿入されています。

THE EARLY BEATLES (U.S. MONO T-2309)

このレコードにはマシンスタンプによる「家のようなマーク」が刻まれています。(工場か?)
これは初期のスクラントン・プレスの表記です。
スクラントン・プレスのマークは、三角形の中に"IAM"の文字が並べられたものが有名ですが、ごく初期にはこの家のようなマークが使われていました。

マトリクスはT1・2309・F1 (SIDE 1)、T2・2309・F1 (SIDE 2)で、いずれもマシン・スタンプです。

レーベルは光沢のないマット・タイプで、従来あった(Recorded In England)の表記がなくなっています。

HELP! (U.S. STEREO SMAS-2386)

HELP!サウンドトラックのステレオ盤。スクラントンプレス。STEREO表記は左側に配され、字間が広めに開いています。逆にタイトルは小さい文字で中央にギュッと詰まった配置になっています。
このレーベルの最大の特徴はリム・コピーに入っているMFD. BY CAPITOL RECORDS, INC., A SUBSIDIARY OF CAPITOL INDUSTRIES, INC., U.S.A.のコピー。
「製造者:キャピトル・レコーズ(キャピトル・インダストリー子会社)」といった意味合いですが、このコピーが使用されたのは1968年から69年のわずか足掛け2年の間だけです。
マトリクスはスタンパーでSM1-2386-B4 (SIDE 1)、SM2-2386-A1 (SIDE 2)

RUBBER SOUL (U.S. MONO T-2442)

これもリングの小さいDECCAレコードプレスで、レーベル・デザインは東海岸スタイルです。

レーベル周囲の7色のカラー・バンドがきちんと円形に切り取られておらず、いびつなリングになってしまっています。
レーベルは光沢のないマット・タイプ。
マトリクスは手彫りでT1-2442-T12P (SIDE 1)、T2-2442-P13P (SIDE 2)

YESTERDAY AND TODAY (U.S. MONO T-2553)

三角形の中に"IAM"の刻印のあるスクラントン・プレス
マトリクスはマシン・スタンプでT1-2553-G8 (SIDE 1)、T2-2553-G8 (SIDE 2)
レーベルは光沢のないマット・タイプで東海岸デザインです。

REVOLVER (U.S. MONO T-2576)

REVOLVERのU.S. EDITIONモノラル盤です。
マット・タイプ・レーベルで東海岸デザイン。
マトリクスはいずれもスタンパーによるもので、T1-2576-G6 (SIDE 1)、T2-2576-F3 (SIDE 2)
プレスは三角に"IAM"のマークがあることからスクラントン・プレスであることがわかります。

Sgt.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND
(U.S. MONO MAS-2653)

このSgt.〜には、トレイル・オフ・エリアにジャクソンヴィルでプレスされたことを示す「O」の刻印がありますが、上のSOMETHING NEWと違いマシンスタンプによるものです。

マトリクスはSIDE 1がMAS(ここまで手書き) 1 2653 F8 (スタンプ)SIDE 2がMAS X(手書き) 2 2653 F8(スタンプ)と変則的なものになっています。

レーベルは光沢のないマット・タイプで東海岸デザインを踏襲していますが、タイトル、レコードNo.、盤面表記ともかなりフォントが大きめになり、盤面表記の2の数字がカラーバンドぎりぎりまで迫っています。

MAGICAL MYSTERY TOUR
(U.S. STEREO SMAL-2835)

MAGICAL MYSTERY TOURのステレオ盤オリジナルです。
三角にIAMのスクラントン・プレス。
"Produced In England by George Martin"(Recorded In England)と、表記が微妙に変わっています。
STEREO表記は字間の広い独特のものになっており、同じステレオ盤でも上のSOMETHING NEWとはまったく違うデザインです。

RARITIES (SHAL-12060)

80年代にリリースされたU.S.版RARITIESのオリジナル盤です。

このアルバムのために特別に復活させたレインボウ・キャピトル・レーベルで光沢のあるタイプです。
盤面表記の数字はヒゲのある1で、全体のデザインは'60年代の西海岸プレスを踏襲していますが、数字そのものは左側にレイアウトされています。
またリム・コピーは、従来からあった"MFD.〜"で始まる製造者表記に著作権関係の"ALL RIGHTS RESERVED"が続き、長く上の方まで回っています。
もうひとつ忘れてはならない特徴として曲名のレイアウトがあります。上に並んだ画像を見ていただければ一目瞭然ですが、従来キャピトル盤の曲名レイアウトは左揃えが通例でした。しかし、このレーベルに限っては中央揃えになっています。

マトリクスは、SHAL-1-12060(スタンプ)G6(手書き) (SIDE 1)、SHAL-2-12060(スタンプ)G5(手書き) (SIDE 2)
トレイル・オフ・エリアには"MASTERD BY CAPITOL"のクレジットと、2つの星印が両面に刻印されています。
星印ということはL.A.プレスということなのでしょうか。

Rainbow Capitol Label (CANADA)

私の所有の中にレインボウ・キャピトル・レーベルカナダ盤が何枚かあります。
これが米盤とはまた違った特徴を備えており、またよく見てみるとなかなかに謎めいたところもあって面白いものです。
SOMETHING NEW (CANADA Capitol MONO T-2108)

マトリクスは T1-2108-F3 (SIDE 1)、T2-2108-F5 (SIDE 2)でいずれもマシンスタンプ。

特徴としては米盤のRCAレコード委託プレスに見られる"Deep Groove"(深い円形の溝)が見られます。
しかし、トレイル・オフ・エリアにはキャピトル・レコードのスクラントン工場でプレスしたものであることを示す三角に"IAM"のマークがしっかりと刻印されています。
むろんレーベルには"MFD. IN CANADA〜"のクレジットもありながらです。

またそれ以外の特徴としては、米盤ではスピンドル・ホールの真上(タイトル下)に配置されていた(Recorded In England)のクレジットがカッコなしですべて大文字になりRECORDED IN ENGLANDになっています。位置はレーベル右の盤面表記の数字1ともどもカラーバンドぎりぎりのところまで外側に配置されています。
BEATLES '65 (CANADA Capitol MONO T-2228)

マトリクス T1-2228-J2 (SIDE 1)、T2-2228-T2 (SIDE 2)

上のSOMETHING NEWと同じく、RCAプレスの特徴である"Deep Groove"スクラントン・プレスの刻印が同居しています。
やはりRECORDED IN ENGLANDのクレジットが左側にレイアウトされていますが、上のSOMETHING NEWと比べるとやや内側に配置されています。
BEATLES Y (CANADA Capitol MONO T-2358)

T1-2358-G4 (SIDE 1)、T2-2358-G8 (SIDE 2)でいずれもマシンスタンプ。
こちらも大きな円形の段差がありますが、これは"Deep Groove"のような「溝」ではなく一方的な段差になっています。
刻印はやはりスクラントン表記
YESTERDAY AND TODAY
(CANADA Capitol MONO T-2553)

写真でお分かりいただけるようにDECCA委託プレスに見られる小さな円形の段差があります。
これには工場を表すプレス刻印はなし。
マトリクスは手彫りでT1-2553-F25 (SIDE 1)、T2-2553-F25 (SIDE 2)

(RECORDED IN ENGLAND)表記は米盤同様カッコつきでタイトル下に配置されていますが、すべて大文字のままです。
米盤にない"MONAURAL"表記が左側にあります。
全体のデザインは米盤東海岸プレスに近い印象ですが、盤面表記の1には西海岸スタイルのヒゲがあります。
ただし米西海岸プレスほど大きくなく、形も直角になっています。
Sgt.PEPPER'S LONELY HEARTS CLUB BAND
(CANADA Capitol STEREO SMAS-2653)

ST1-2653-W1 (SIDE 1)、ST2-2653-X2 (SIDE 2)

こちらもDECCAプレスタイプの段差があります。
マトリクスは手彫りでST1-2653-W1 (SIDE 1)、ST2-2653-X2 (SIDE 2)

(RECORDED IN ENGLAND)表記がなくなり、代わりに"Produced in England by George Martin"のクレジットが曲の最後に添えられています。STEREO表記が左側にあります。
カナダ盤は米盤のレーベルに準じたデザインではありますが、曲名の表記は米盤がゴシック系のフォントが主流であるのに対し、私の所蔵に限って言えばいずれも飾りフォント系です。
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