Various Review
Vol.3
東芝EMIが、自社の大物アーティストの初期の演奏を中心に編集したコンピレーション・ アルバム。 レコード会社限定とはいえ、わが国ロック界の黎明期から胎動期を支えたアーティストた ち(もちろん今でもバリバリの現役でやっている人たちがほとんどだ。)の熱いパフォー マンスをまとめて楽しめるという点で非常におトクな1枚である。 @('70年3月)A('70年12月)はフォーク・トリオだった第1期RCサクセションの名演。 後に仲井戸麗市を迎え入れてド派手なルックスとパンキッシュなロックン・ロール・サウ ンドで一世を風靡することになる彼らからは想像もつかないメッセージ性の強いフォーク ・ソングだが、@にはスタックス系の「黒い」雰囲気がたっぷりと盛り込まれている。 Dは遠藤賢司のデビュー・シングル。('69年2月) G('71年5月)H('72年7月)は日本のニュー・ロック・グループの草わけであるモップスの名 演。 祭囃子ともイタコとも通じる日本の伝統的リズムを駆使したGは、アルバム「月光仮面・ 御意見無用」の中で英語で演じられていたものの日本語ヴァージョン。 Hは吉田拓郎のカヴァーで、後に子供ばんどがこのモップス・ヴァージョンをモチーフに したハードなカヴァー・ヴァージョンを発表している。 Iはサンディー&ザ・サンセッツの久保田真琴が'73年に発表したカントリー・フレーバー あふれる佳作。 KLはそれぞれ日本を代表するプログレッシブ・ロックグループの名演。 MNは'89年に桐島かれんをヴォーカルに据えて再結成されることになるS・ミカ・バンド の'73年のライブ。 桐島女史には申し訳ないが、ミカの強烈なことこの上ない存在感とキャラクターは桐島の それとは比較にならない。 実際に使用されたギターは不明だが、高中正義のリード・ギターの音色は、後に彼の象徴 ともなるYAMAHA SGの粘っこいそれと全く同じだ。 高橋幸弘のドラムはスナッピーが反響しているのか、ずっとロールし続けているのか分か らないが、後者であるとしたら凄まじいプレイである。 店主がこのCDを購入した理由はOが入っていたから。 後にアイ高野(元ザ・カーナビーツ、ゴールデン・カップス)が加入して「ロンリー・ハ ート」の大ヒットを飛ばすことになるクリエイションが人気プロレスラー「ザ・ファンク ス」のテーマ曲として'77年に発表した"SPINNING TOE-HOLD"の続編だ。(シングル盤ではB面に収 められていた) 「全日本プロレス中継」の中でかかりまくっていた"SPINNING TOE-HOLD"もカッコいいが、 基本のメロディ・ラインは生かしつつ、アップ・テンポでハード・ドライビングな16ビー トのフュージョン風ナンバーに仕上げたNo.2はさらにカッコいい出来栄えだ。 当時のクリエイションはまだ4人編成のブルース・ハード・ロックを基調とするグループ だったが徐々にこのようなフュージョン・フレーバーの曲をレパートリーに加えていった 頃だった。 リーダーでコンポーザーでもある"Flash"竹田和夫の超絶テクニックは言うまでもないが、 他のメンバーのセンス・テクニックも当時のロック界では図抜けていて、まさにスーパー ・グループだったのだ。 Qは「ヒカシュー」の巻上公一が歌う名曲。オリジナルは伊藤久男。 いわゆるオムニバス盤の類の中では決して派手な内容ではないが、「商品化されたロック ・ミュージック」以前の、「無垢な音」と「情熱」がいっぱい詰まった音源である。 <了>
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