Various Review Vol.4

Who's Next Video CLASSIC ALBUMS SERIES
THE WHO "WHO'S NEXT"
-THE GREATEST RECORDS IN ROCK HISTORY-

VIDEOARTS MUSIC VAVG-1063

@.イントロダクション
A.アイ・キャント・エクスプレイン〜マイ・ジェネレーション
B.トミー,聞こえるかい〜ピンボールの魔術師
C.ピュア・アンド・イージー
D.バーゲン
E.ゲッティング・イン・チューン
F.ババ・オライリィ
G.無法の世界
H.ゴーイング・モービル
I.マイ・ワイフ
J.ビハインド・ブルー・アイズ
K.無法の世界
L.ジョイン・トゥゲザー

本コラムで取り上げる初のビデオ作品。現在はもちろんDVDで発売中だ。
傑作アルバム"WHO'S NEXT"の製作過程を、メンバーおよびこのレコードのレコーディング に携わった関係者たちが振り返る、という内容の企画モノビデオ。
"NEXT"以外にも、"TOMMY"の完成までのいきさつや、日の目を見ることのなかったピート・ タウンゼントのプロジェクト"LIFE HOUSE"の頓挫までの詳細な経緯、さらにはドラッグの 告白、かつてザ・フーというロック・バンドがシーンに何をもたらしてきたか、といった 様々な内容の談話が収録されており、ザ・フーの大ファンでなくとも見ごたえのある映像 作品だ。

出演はメンバーの3人(タウンゼント、ロジャー・ダルトリー、故ジョン・エントウィッスル) に加え、初代マネージャーのクリス・スタンプ、フー以外にもストーンズ、フェイセス、 ボズ・スキャッグス、イーグルスなどを手がけた名プロデューサー・グリン・ジョンズ、 ザ・フーのプレス・エージェント・キース・アルサム、ロック評論家デイブ・マーシュ、 熱烈なザ・フーのファンであるアイリッシュ・ジャック、"Baba O'Riley"で個性的なヴァイ オリン・プレイを披露したデイヴ・アーバス、ザ・フーのロード・マネージャー・ボブ・ プリデンといった、まさにこの時代のザ・フーを語るにふさわしい面子がコメントしてい る。

イントロダクションでは、出演者総出で"NEXT"のなんたるやを語っているが、その中で特 に気になったのは、スタンプの「当初目論んでいたほどには素晴らしくなかった」という 一言だ。
やはり、レコードとしてはいまだに日の目を見ていない"LIFE HOUSE"のことを頭において の発言であろうか。

このビデオでは、プロデューサーのグリン・ジョンズやタウンゼンドが卓をいじりながら 、各メンバーのパートを詳細に解説してみせたり、エントウィッスルがレコードの再生に 合わせてベースを弾いたりと、"NEXT"のサウンドを各構成要素から細かく分析した作りに なっていて、特に楽器を演奏する人間にとっては、憧れのレコードのサウンドの秘密が解 き明かされる楽しみもある。
ザ・フーはタウンゼンドがほぼ完成形に近いデモ・テープを作って、後は他のメンバーに 任せて各人の個性を盛り込んでザ・フーのレコードとして完成させていた、というのは今 となっては有名な話だが、そのあたりのレコーディング・プロセスについてもタウンゼン ト自身が語っている。
また、このビデオの中ですべての出演者が力を込めて語るのは、故キース・ムーンがいか にこのバンドにとって重要な、かけがえのない存在だったかということだ。
ダルトリーがキースのパートをプレイバックするシーンでは、「コイツぁ、ホントにスゲ ェよな。」といいたげな笑顔を見せる。
こんな空想しても仕方がないが、もし、キースが今でも生きていたら、ステージでどのく らいのパフォーマンスを見せてくれただろう。
サポート・ミュージシャンに任せて形だけプレイするようなことは絶対にしないはずだ。
たとえヨレヨレでも、彼ならひっちゃきにプレイしてくれただろうな・・・。

もうひとつの見どころは、名曲の数々がタウンゼントの弾き語りによって再現されてると ころだ。
ピアノによる"PURE AND EASY"、アコースティック・ギターによる"WON'T GET FOOLED AGAIN" を見ると、今まで作家としての側面、あるいはザ・フーの破天荒なステージを支えたパフ ォーマーとして見られることの多かったタウンゼンドが純粋な演奏家としても極めて優秀 な人であったことが分かる。

それにしても、このビデオに登場するメンバーはみんなずいぶんと年を取って見えた。
故エントウィッスルは早くからヒゲ面だったし、白髪になるのも早かったのでそれほどで もないが、タウンゼンドはツルッパゲだし、ダルトリーにいたってはカーリー・ヘアーの ハード・ロック・シンガーのイメージはどこへやら、コメントの途中で老眼鏡を取り出し てかけて見せたり、すっかり爺ちゃんだ。
リズム隊が2人ともこの世を去ってしまった今、サポート・メンバーを加えて再びステー ジに立ったとしても、もうかつてのバンドと同じではないが、少なくともタウンゼントが 生きている限り、ザ・フーは永遠に不滅です。

<了>