ワイン法

 ドイツのワインもフランスやイタリアなどのワインと同様、ECの規定をふまえたワイン法(Weinrecht 最初のワイン法の制定は1901年、現在の新ワイン法の制定は1971年)によって葡萄の摘み取りから瓶詰めに至るすべての行程がコントロールされ、品質区分や名称、産地名、検定番号などをラベル(Etikett)に記載するように義務づけられている。

 まず品質区分は次の通りであり、これ以外の名称や表現を使用してはならない。

 生産地域(上のラベルではBaden)もワイン法で定められているが、さらにそれぞれの生産地域はアールを別として多くの生産地区(Bereich)に分けられ、例えば生産地域Rheinhessenには40の生産地区がある。さらにこれらの生産地区は通常いくつかの総合畑(Großlage)があり、しかもそれぞれの総合畑はさらにいくつかの単独畑(Einzellage:上のラベル参照)から成り立っている。上質ワインのラベルには、このようにしばしば単独畑の名前まで記載されているが、地域、地区、畑の区分はブレンドの問題と密接に関連し、極端な場合は一つの単独畑から収穫した葡萄のみから作られた(もちろん同じ品種の)ワインがあり、これは純粋主義を重んじるドイツ・ワインの最大の特徴の一つである。

生産者検索(上のラベルのワインの生産者は中央の筆記体、あるいは下から2行目のBernhard Huber。この生産者も左の検索装置で検索できる。)

 なお Tafelwein の場合は以上の生産地域名を使用してはならず、これに代えて以下の生産地域名が使用される。

 Rhein, Mosel, Main, Neckar, Oberrhein Römertor, Oberrhein Burgenbau

 上質ワインは公的な品質検査を受け、検定番号(A.P.Nr, Amtliche Prüfnummer:上のラベルの品質区分の箇所を参照)をラベルに記載せねばならないが、その条件として葡萄の品種が特定され、さらに同一の生産地区で摘み取られた葡萄を使用せねばならない(逆に同一生産地区内ではブレンドが可能)。またアルコール含有量は容積百分率で9%以上なければならない。

 一方、等級(Prädikat)つき上質ワインもブレンド可能だが、但しそれも同一生産地区内に限られ、補糖は禁止されている。一般的に補糖は不作時に決められたアルコール度を保つために行われるが、ここでもドイツ・ワインは自然の糖分のみの使用という純粋主義を保持している。さらにこのワインには、瓶詰めは収穫の翌年の1月1日以降に行い、また後述の遅摘みや房選びなどのワインに関しては摘み取り前の予定申告等の厳格な規則が課されている。なお aus eigenem Lesegut および Erzeugerabfüllung といった記述がある場合にはブレンドがなされておらず、また例えば単独畑名が記してある場合は、その畑で採れた葡萄が 85%以上使われていることを示す。

 さらに等級には次の5種類があり、後のものほど高級ないし希少価値が高くなる。(上のラベルにはこれに関する記載は何もないが、この場合は以下の1)を指す)

 なお上質ワインのうち、発酵後の残留糖量が1l中18g以下で、酸量がこの残留糖量より10g以上少ないものを halbtrocken(中辛)、残留糖量が9g以下で酸量が7g以上のものを trocken(辛口)と言い、それをラベルに記載するか(上のラベルのワインは、そこに記されているように、この辛口にあたる)、あるいは前者を示す緑色のラベル、後者を示す黄色のラベルを別に貼ることが許されている(滅多に使われないが甘口の場合は赤)。

2006.12.08 更新