U.S. EDITIONSアメリカ合衆国が産んだ名(迷)盤たち現在、節目節目で発表されるビートルズの企画モノについて「どこの国で編集されたもの か」ということは発想はありません。今はもうグローバルで物事が進む時代、「世界同時発売」だって当たり前。 振り返って1960年代、まだビートルズが現役だった1960年代、彼らのアルバムには大きく分けて2つの制作過程がありました。本国イギリスで彼ら自身の意図の下に制作されたオリジナル・アルバム(英国盤 全13枚 Oldies含む)、そしてそれ以外の国で独自に編集された各国オリジナル編集盤です。 特にビートルズ最大のマーケットとなったアメリカでは、配給元のCapitolレコードによって多数の編集盤が(かなり強引な手法で)作られ、それらはアメリカ国内における「オリジナル・レコード」としてアメリカのファンに流通し、日本でも1970年代まで英国オリジナル盤に匹敵するタイトル数が東芝EMIから公式盤としてリリースされていました。 1964年のCapitolからのファースト・アルバム発表以来、アメリカではビートルズが本来意図したオリジナル・アルバムは発売されず、初めて英国オリジナルと同じ内容のものが発表されるようになったのは、1967年の"Sgt. PEPPER'S LONELY HESRTS CLUB BAND"が最初でした。 これらの編集盤はビートルズのアルバム・コンセプトを無視して商業主義的な動機によってのみ作られたもので、アーティストの尊厳を著しく傷つける「甚だ怪しからんモノ」であるかのように、一部の評論家から非難されたこともありました。しかし、コレクターにとってはビートルズの関わった当時の貴重なアイテムがひとつでも多く存在するのはそれだけ楽しみが増えることになるし(お財布はキビシイけれど)、またマニア的な視点から言えば、編集盤ができる過程で生まれた様々なテイク違いなどが楽しみのネタになるのも事実です。 CDがこの世に登場し、ビートルズの作品もCD化されるにあたり、アップル・レコードとメンバーは英国オリジナル・アルバムの12タイトル以外は米国盤"MAGICAL MYSTERY TOUR"しかCD化を認めず、キャピトル・レコード・オリジナル編集によるこれらの作品は永らくアナログ盤でしか聴くことが出来ませんでした。しかし、2004年11月に"THE CAPITOL ALBUMS VOL. 1 "(MEET THE BEATLES,THE BEATLES' SECOND ALBUM,SOMETHING NEW,BEATLES '65のボックス・セット)が、2006年6月に"THE CAPITOL ALBUMS VOL. 2 "(THE EARLY BEATLES,BEATLES Y,HELP!(Original Sound Track),RUBBER SOUL(U.S. EDITION)のボックス・セット)がリリースされ、キャピトル編集盤についてもオリジナル・アナログ・サウンドとリマスターされたCDサウンドを聴き比べる楽しみができました。 この項では、そんな各国編集盤の中でも最大の数と影響力を誇ったアメリカCapitol編集盤と、アメリカでの最初のリリースとなったVee Jayレコードの"INTRODUCING THE BEATLES"、初主演映画のサウンド・トラックであるUnited Artistの"A HARD DAY'S NIGHT"をご紹介します。 |
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INTRODUCING THE BEATLES Original Release In U.S. 1964.01.10 (Version 1), 1964.01.27 (Version 2) Vee Jay VJLP-1062 Vee Jayレコードから発表された、ビートルズのアメリカ・デビュー盤。 収録曲は、Version 1が英盤"PLEASE PLEASE ME"から"Ask Me Why"、"Please Please Me"の2曲をはずした 全12曲。Version 2は"Love Me Do"、"P.S. I Love You"を上記2曲に再度差し替えて1月27日に再発されました。 |
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MEET THE BEATLES Original Release In U.S. 1964.01.20 Capitol T-2047(MONO) ST-2047(STEREO) Capitolレコードからのデビュー・アルバム。 ジャケットは英セカンド・アルバム"WITH THE BEATLES"の写真を流用、収録曲は"WITH〜" から9曲、アメリカではSP、EPで発売されていた"I Want To Hold Your Hand"、"I Saw Her Standing There" "This Boy"の3曲が加えられました。発売2ヶ月で360万枚という売上世界記録(当時)を記録、ビルボードで11週連続第1位を記録。 2004年に初のCD化。 |
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THE BEATLES SECOND ALBUM Original Release In U.S. 1964.04.10 Capitol T-2080(MONO) ST-2080(STEREO) 英盤"WITH THE BEATLES"からアメリカ未発表の5曲をチョイスし、さらにアメリカ既発売の "Thank You Girl"、"You Can't Do That"、"I'll Get You"、"She Loves You"さらに新曲 "Long Tall Sally"、"I Call Your Name"の2曲と、強引に曲をかき集めて作られたCapitolセカ ンド・アルバム。発売直後に売上100万枚を突破し、ビルボード5週連続1位を記録。 2004年に初のCD化。 |
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A HARD DAY'S NIGHT Original Release In U.S. 1964.06.26 United Artists UAL3366 (MONO) UAS6366(STEREO) United Artistsから発売された同名主演映画のオリジナル・サウンド・トラック。 ビートルズの演奏による映画使用曲7曲、映画では音楽監督を務めたジョージ・マーティ ンの指揮によるオーケストラの演奏曲が4曲、未使用曲"I'll Cry Instead"の合計12曲収 録。 "I'll Cry Instead"が収録されているのは、当初は映画に使用される予定だったため。 オリジナル・モノラル盤の鮮やかな赤いジャケットはいつ見ても美しい。 |
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SOMETHING NEW Original Release In U.S. 1964.07.20 Capitol T-2108(MONO) ST-2108(STEREO) 私の認識が正しければ、初期キャピトル編集盤の中でも最も人気のあるアルバムではないでしょうか。 エド・サリヴァン・ショウ出演時の写真を使用したジャケットが、当時のアメリカ・ショウ・ビジネスの雰囲気をよく伝えてくれています。 収録曲は英盤"A HARD DAY'S NIGHT"から8曲、英EP盤"LONG TALL SALLY"から2曲に加え、 ドイツ語版"I Want To Hold Your Hand"の計11曲。目玉といえるヒット曲が入っていないにもかかわらず、オークションでは今でも人気の1枚です。 2004年に初のCD化。 |
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THE BEATLES' STORY Original Release In U.S. 1964.11.23 Capitol TBO-2222(MONO) STBO-2222(STEREO) デビューからアメリカでの成功までを、ヒット曲を織り交ぜながらストーリー仕立てにし た企画モノ。2枚組であるが、ボックス仕様のためレコード番号はモノラル、ステレオ各1つ。 企画モノながら、1964年12月にIRAA認定のゴールド・ディスクになりました。 |
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BEATLES '65 Original Release In U.S. 1964.12.15 Capitol T-2228(MONO) ST-2228(STEREO) 英盤"BEATLES FOR SALE"に対応する米盤で、"FOR SALE"(12月4日)とほぼ同時に発売さ れた。"FOR SALE"からの8曲に、英盤"A HARD DAY'S NIGHT"収録の"I'll Be Back"、シングル曲 "I Feel Fine"、"She's A Woman"を加えた全11曲。 アメリカ音楽を強く意識した"FOR SALE"の雰囲気を残しつつ、ヒット・シングルも収録さ れたこの作品は人気を呼んだようです。 2004年に初のCD化。 |
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THE EARLY BEATLES Original Release In U.S. 1965.03.22 Capitol T-2309(MONO) ST-2309(STEREO) Vee Jayレコードの発売権の期限切れによって"PLEASE PLEASE ME"の発売権を得たCapitol が発表した作品。 "PLEASE PLEASE ME"から"I Saw Her Standing There"、"Misery"、"There's A Place"の3 曲を除外して構成してあります。 コレクターなら欲しい1枚ですが、当時のレコードとしてはすでに知られた曲がほとんどだ ったせいもありあまり売れなかったらしいです。 2006年に初のCD化。 |
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BEATLES Y Original Release In U.S. 1965.06.14 Capitol T-2358(MONO) ST-2358(STEREO) "FOR SALE"から6曲、まだ発表されていない英盤"HELP!"から3曲、同じく新曲の"Bad Boy" 、既発表シングル"Yes It Is"の全11曲からなる究極の寄せ集めアルバム。 ベスト盤でもないのに異なるオリジナル・アルバム(しかも発売前のものまで!)から曲 を集めてくるだけでもかなり乱暴ですが、ジャケット写真もケーキ・カットをする4人の写真 を下半分ぶった切った雑なデザイン。もはや形になれば何でもいいという感じです。 2006年に初のCD化。 |
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HELP! Original Release In U.S. 1965.08.13 Capitol MAS-2386(MONO) SMAS-2386(STEREO) 2作目の主演映画のオリジナル・サウンド・トラック盤。 英盤"HELP!"のA面収録7曲と、ジョージ・マーティン・オーケストラの演奏に よる挿入曲6曲が収録されています。 オーケストラ・ナンバーの一部はケン・ソーンによって書かれており、オリジナルのビー トルズ・ナンバーとのバランスが絶妙です。特にBAは、かつてのヒット曲のメロディをインド風にアレンジして聴かせています。 2006年に初のCD化。 |
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RUBBER SOUL(U.S. EDITION) Original Release In U.S. 1965.12.06 Capitol T-2442(MONO) ST-2442(STEREO) 英国盤と同タイトル、同ジャケットの米国盤はこの"RUBBER SOUL"が初めてです。 ただし収録曲はきっちり(?)Capitolの手が加わっており、"Drive My Car"、"Nowhere Man" 、"What Goes On"、"If I Neede Someone"の4曲がはずされ、英盤 "HELP!"から"I've Just Seen A Face" 、"It's Only Love"の2曲がはめ込まれています。"RUBBER SOUL"の象徴とも言うべき曲がいずれもはずされたのは残念だが、アコースティックなサウンドで統一された感じにはなっています。 2006年に初のCD化。 |
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YESTERDAY AND TODAY Original Release In U.S. 1966.06.20 Capitol T-2553(MONO) ST-2553(STEREO) オリジナル盤の発売当初は、バラバラにされた赤ん坊の人形が屠殺服を着た4人にまとわりつ いているという通称「ブッチャー・カヴァー」という不気味なジャケットが不評を買い、発売後すぐに現行の「トランク・カヴァー」に差し替えられましたが、わずかな期間に出回った「ブッチャー・カヴァー」はマニアの間で高額な値段で取引されるようになりました。 収録曲は未発表の"REVOLVER"に収録される新曲3曲、英国盤"RUBBER SOUL"から4曲、既発 シングル曲4曲の11曲。 |
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REVOLVER(U.S. EDITION) Original Release In U.S. 1966.08.08 Capitol T-2576(MONO)ST-2576(STEREO) "RUBBER SOUL"と同じくキャピトル独自の編集が施された1枚。 "YESTERDAY AND TODAY"に収録された3曲を除いた11曲で構成されています。 除かれた曲はあるものの、他のアルバムやシングルからねじ込まれた曲がないことで、辛 うじて雰囲気を壊していないのが救いでしょうか。 はずされた3曲がいずれもジョンの作品であることが謎です。 |
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MAGICAL MYSTERY TOUR Original Release In U.S. 1967.11.27 Capitol MAL-2835(MONO) SMAL-2835(STEREO) レビュー part2(1966-1967)参照 |
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HEY JUDE Original Release In U.S. 1970.02.26 Apple SW-385(STEREO) もともと"THE BEATLES AGAIN"(SO-385)というタイトルで発売される予定だった。 私のコレクションもレーベルのタイトルは"THE BEATLES AGAIN"になっています。 大ヒット・ナンバー"Hey Jude"を軸に、初期から後期までの大ヒット曲とそのB面 曲を1枚で楽しめる。 1枚モノのためかなり駆け足になりますが、アメリカ初の「グレイテスト・ヒッツ」的な内容で人気。 |
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RARITIES Original Release In U.S. 1980.03.28 Capitol SHAL-12060(STEREO/MONO) イギリスで公式発表されていながらアメリカでは未発表の曲を中心に、一部キャピトルが 独自に作り上げたニュー・ヴァージョンを含む米盤"RARITIES"。 日本のファンに初お目見えのマテリアルが少ないせいか、英盤"RARITIES"に比べると地味 な印象。 "Help!"のモノラル・シングル・ヴァージョンが収録されています。 内ジャケットにはあの「ブッチャー・カヴァー」を使用。 |
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