ジャガイモ料理

   ライン地方などでは〈大地のリンゴ Erdapfel〉とも呼ばれるジャガイモ(Kartoffel)(→ジャガイモの文化史)は、ドイツの最も重要な食材であり、種類やタイプも多く、また非常に美味しい。タイプを区別する最大の特徴はでんぷん(Stärke)の含有量であろう。例えば含有量の非常に多いBrennkartoffelは、茹でたり煮たりするとなめらかで崩れにくいが、サラダには向かず、この場合は比較的でんぷん質の少ないサラダ・ジャガイモ(Salatkartoffel)を使う。一般的にドイツのジャガイモは、日本の〈男爵〉のように、茹でてもいわゆる粉ふき状にならない。これはでんぷんの含有量が日本のジャガイモより多いからである。

   軽い食事としても出されるポテトサラダ(Kartoffelsalat)には冷たいもの(左の写真)と暖かいもの(下の写真)があり、地方によってもかなり異なる。温かい方はサラダ・ジャガイモをたっぷりの湯で固めに茹で、熱いうちに皮をむいて5ミリ程度の薄切りにし、冷めないようにアルミ箔などで包んでおく。フライパンで刻んだベーコンを中火で狐色になるまで炒め、皿に上げておき、残りの脂でみじん切りのタマネギを弱火で透き通るようになるまで炒め、酢、水、塩、胡椒を加えて1分ほど沸騰させる。このソースをジャガイモにかけてベーコンと軽く混ぜ、食べる直前にみじん切りのパセリを添える。

   冷たい方も種類が多いが、基本的には茹でて薄切りにしたものを冷まし、炒めたベーコンや茸、トマトやきゅうりなどの野菜を添え、サワークリームなどで和える。

   きわめて簡単で、名前が面白い農村の伝統的なリンゴとジャガイモの料理に天と地(Himmel und Erde)がある。名前の由来はジャガイモが大地のリンゴと呼ばれていることにあるのであろう。つまり、基本的には上にリンゴ、下に大地のリンゴ即ちジャガイモを配置し、多くの場合は間に血のソーセージ(Blutwurst)を挟む。もちろん調理法は地方によって異なるが、最も簡単な例は、サイコロ状に切って塩と砂糖で煮た同量のジャガイモとリンゴを鉢に盛り、上にベーコンとカリカリに炒めた輪切りのタマネギをのせる。

   同じように簡単な料理として、薄切りにした茹でたジャガイモを、炒めたベーコンとタマネギとともに卵でまとめたホッペルポッペル(Hoppelpoppel別名農夫の朝食Bauernfrühstück)等があり、これもサラダやキューリのピクルスなどを添えて簡単な主食として食べることが多い。

   その他、すべて簡単な料理だが、上で触れたクレーセの類い、つまりジャガイモのクレーセ(Kartoffelklöße)、あるいは肉の代わりに裏ごししたジャガイモを使うジャガイモのシュニッツェル(Kartoffelschnitzel)等、地方色豊かな様々なジャガイモ料理がある。いずれにせよ、こうしたジャガイモ料理の決め手はジャガイモ自体であり、日本のジャガイモでは同じものはほとんど作れない。